信長の野望Online群雄サーバー上杉家でのプレイ日記


by kanon-gunyu
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毘沙門天さまがみてる3(後編)

「お待ち下さい!」
乃梨子の背後から、その声はあがった。
「その人は白薔薇さまから部隊アイテムを頂く資格などございません」
ざわめくPCをかき分けるようにして、声の主は前に進み出た。
「瞳子さん!」
乃梨子は、その顔を確認して叫んだ。
「薔薇のお姉さま方。神聖な儀式の邪魔をして、ごめんなさいっ」
瞳子さんはまず乃梨子を一瞥し、それから三色の薔薇さまに向き合ってペコリと頭を下げた。トレードマークの縦ロールが、バネのようにブルンブルン揺れた。
「これはどういうことなの。えっと……瞳子さん?」
「聞いてください、紅薔薇さま。もう瞳子、我慢できなくって」
でた。
必殺、お目目うるうるの術。
(この子、いったい何を言うつもりなんだか)
たらり。乃梨子のこめかみに、一筋汗が流れた。
その時、白薔薇さまの顔色が変わった。
(志摩子さん……?)
志摩子さんの目は、一点に集中していた。乃梨子がその視線の先を追うと、瞳子さんの左手に行き当たった。
(何だろう)
目を凝らしてよく見て。「げっ!」と声を出しそうになった。彼女の手が握りしめていた物には、確かに顔色を変えるだけの威力があった。
(どうにかして取り返さないと……)
乃梨子が手を伸ばしかけた刹那、満を持して瞳子さんの左手が大きく振り上がった。
「あなたには、こちらの方がお似合いよ!」

城の天窓からのまぶしい光を受けた、Titanサーバーへのワールドパスが刻まれたクリスタルは、瞳子さんの高笑いをBGMに、まるで後光のように燦然と輝いたのでだった。
-南無八幡大菩薩。

「これは乃梨子さんの物ね?」
瞳子さんが勝ち誇ったように告げた。
乃梨子は今にも忘却の唄を繰り出しそうな志摩子さんを目で制してから、仁王立ちして「私のじゃないわ」と答えた。
それは志摩子さんから預かった物であるから、嘘は言っていない。もちろん志摩子さんのものだなんて言うつもりもさらさらなかった。
「瞳子さんはどうして私の持ち物だと断定するのかしら?」
やられてばかりじゃ、しゃくだった。売られたけんかなら、買ってやる。
「それは…」
一瞬口ごもる縦ロール。
ワールドパスを乃梨子の大袋から見つけたと言えば、他人の袋を無断で開けたことを白状しなくてはならなく、G○コール行きだ。
「ね、どうしてそう思ったの?」
「それは、偶然両替商が乃梨子さんの倉庫から物を出したときに落としてしまったのを見つけたのよ」
「嘘つくんじゃないわよ!」
(こいつは、謙信公の御前でよくもしゃあしゃあと)
「どうなの、乃梨子さん。瞳子さんが言うようにこれはあなたの物なの?」
今度は紅薔薇さまが尋ねてきた。
「だから。違いますってば。」
「毘沙門天様に誓える?」
「もちろん」
胸を張って乃梨子は答えた。しかし、瞳子さんはそれを聞いて、ふふんと鼻で笑う。
「じゃ、これ捨てちゃってもいいわけね?」
「えっ!?」
クリスタルはその手を離れると、ポーンと弧を書いて空中を飛んでいった。
「あなたがこのワールドパスの持ち主でないなら、どうなったって構わないでしょ?」
キャッチした黄薔薇さまが、お手玉のようにクリスタルを弄んだ。返してほしくば、自分の物であると認めろ、そういうことか。
とんでもない宗教裁判だ。
「ワールドパスが踏み絵なわけですか。……分かりました。認めます。それは確かに私が持ってきたものです」
「乃梨子!」
志摩子さんが大音響を使ってきた。
息をのんで成り行きを見守っていたPCたちはたちまち行動不能状態に陥った。
「志摩子さんは、余計なことしないで」
「でも」
「いいから。今、ヘイト集めてるのは私なんだから。」
乃梨子は志摩子さんに背を向け、庇うように捨身飼虎をした。
「いい心がけね。」
紅薔薇様が優雅にほほえんだ。
「別に信Onを冒涜するつもりで、ワールドパスを持っていたわけではないんです。信Onとは別のゲームの話ばかりをチャットでしてたのは悪かったかもしれないけど、だったら両替前でやってる意味のない所作も同じでしょう?ユーザー規約に、F○11の話をしてはいけない、なんて記述はないもの」
乃梨子はまくし立てた。
「おや、開き直ったね」
黄薔薇さまが呆れたようにつぶやいた。
「パスを返してください」
「甘いわね」
「返して欲しかったら、持ち主の名前をおっしゃい。乃梨子さん、あなたはさっき、それは自分のではない、って言っていたわね?今だって持ってきたことを認めただけで、自分の物だとは決して言ってない。ということは、別に持ち主がいるという意味ではないの?」
「…」
さすが議長。聞き漏らしていない。
「乃梨子さん、お答えなさい」
「それは-」
言葉に詰まった。
乃梨子がここで真実を口にすればこのバカげた宗教裁判は志摩子さんにまで及んでしまう。
そんなこと許せない。
(だって。私はともかく、志摩子さんは純粋な心で毘沙門天を信仰しているんだもん。もしみんなに知られたら、引退するという決心までしているのに…)

「もうおよしになって!」
志摩子さんが叫んだ。気がつけば、彼女は乃梨子よりも半歩ほど前に進み出ていた。
大きく一息吸い、そしてはっきり言ったのだった。
「そのワールドパスの発行主は、私です」
「志摩子さん!」
乃梨子の悲鳴に近い叫びの他にも「志摩子さま」とか「白薔薇さま」だとか、彼女の呼び名が連呼された。春日山城は大声でどよめき、志摩子さんの言動に注目する顔、顔、顔。
志摩子さんが振り返り、ぐるりと一周城内を見渡す。すると、一瞬にして大声が止んだ。「説明してくれるわね?」
紅薔薇さまが、志摩子さんに真っ直ぐ向かい合った。
「誰よりも敬虔な信On廃人のあなたが、どうして-」
「私の一家がアルタナ信仰だからです」
謙信公に向かい合って堂々と宣言する志摩子さんは、言葉で言い表せないほどきれいだった。
誰も、何も言えなかった。
乃梨子は力が抜けて、その場に尻をついていた。
(とうとう、言っちゃった)
「せっかく庇ってくれたのに、ごめんなさい」
「志摩子さんっ!」
乃梨子は抱きついて子供のように泣いた。
(これで何もかも終わっちゃったんだ)

パチパチパチパチ。
どこかで誰かが拍手した。
「やっと言ったわね、志摩子」
それは紅薔薇さま。
「やれやれ。今年の余興は大がかりだったねぇ」
首をすくめる黄薔薇さま。
「え?」
抱き合っていた志摩子さんと乃梨子は、同時につぶやいた。
「美しい姉妹愛を見せてくれた、志摩子と乃梨子に盛大な拍手を!」
紅薔薇さまが大声でその場を盛り上げ、締めくくった。
「え?……ええっ!?」
信じられないことに、城内は土砂降りの雨が降ったような拍手で包まれた。
キョトンとしている二人に、紅薔薇さまが言った。
「どうして、今まで隠していたわけ?F○11プレイヤーは信Onをプレイしてはいけない、なんてこと本気で思っていたの?」
「は?」
「全く、真面目というか、頑固というか。でも、お膳立てした甲斐があった」
得意げに黄薔薇さまがうなずいた。
(お膳立て?)
「じゃ、私の家のことは……」
おずおずと尋ねる志摩子さんに対し、黄薔薇さまは笑った。
「知ってたに決まっているでしょう。私の祖父はリンクシェル小寓寺のメンバー。あなた、そんなことも知らなかったの?」
「えっ!?」
「ついでだからいいこと教えてあげるわ。リンクシェルのみんなは志摩子が信Onやってることを知っているわよ。だって、志摩子がいつ告白するか、リーダーと賭をしていたくらいだもの」
「……そんな」
紅薔薇さまは、いとも簡単に言ってくれた。こっちは結構悩んだというのに。

(大衆の面前でさらし者になった、私の涙っていったい-)
「乃梨子さんという存在に目をつけた、私の手柄も大きいですわね?」
「瞳子さんっ!」
ハッとして駆け寄ると、彼女はうふっと首を傾げて笑った。
「あのね。瞳子、紅薔薇・黄薔薇のお姉様方に『どうしても』って頼まれちゃって。でも悪役やるのって楽しかった!」

この何ともいえないナイスな性格。これから同じ部隊で戦うと思うと、めまいすら覚えた。
「薔薇のお姉様方、瞳子お役に立ったでしょうー?誉めてくださーい」
「瞳子ー!あんた、その前に謝れよッ!!」
そして怒濤のような乃梨子の怒鳴り声が、城内の高い天井に響き渡ったのであった。


今野緒雪著 マリア様がみてる「チェリーブロッサム」銀杏の中の桜 より

脚注
・ワールドパス:知人がプレイしているサーバーでキャラを作るために必要な数字列。
これがないとランダムで振り分けられるらしい>サーバー
これがF○ではおなじみのクリスタルに刻まれているというのは私の勝手な創作です

・リンクシェル:どこにいても同じグループのメンバー間でチャットができるシステム。このシステムを利用してグループが形成されるらしいです。

・アルタナ:F○世界で人類を創造したといわれる女神だそうです。アルタナ教信者という称号があるクエストをこなすともらえるようです。

↑書いてる人は、F○11やったことないので、ぜんぶ伝聞系^^;

注意
この物語は仮想的な信Onサーバー「山百合」での出来事であり、実際の信Onの使用とは異なることが多々ありますw


あとがき
パターン的に、他家の間者疑い?も考えたのですが、他のゲームでも廃人だったという
設定を取りました。
文章中から、乃梨子は僧、志摩子は雅楽巫女と推察されます。志摩子も僧の方がよかったかもしれませんが、大音響使わせたかったので( ぉぃ 巫女に。(あとは志摩子さんのピアノなら聞いてみたかったを、僧だと別の楽器にできないのもあったんですけど)
ちなみに、祥子は神典巫女(裕巳使い→弓使いということで)。
腕力10振り&腕力付与装備での光の矢は驚異ですw
他のネタの構想もすでにありますが、今回やたらと長くて疲れたので
次はもうしばらくしてからということで^^;
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by kanon-gunyu | 2005-06-11 03:51 | 毘沙門天様がみてる