信長の野望Online群雄サーバー上杉家でのプレイ日記


by kanon-gunyu
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毘沙門天さまがみてる4 胸さわぎの月曜日

「お待ちなさい」
とある月曜日。
春日山城門の先にある二股の分かれ道で、祐巳に対話が来た。
毘沙門天像の前であったから、一瞬毘沙門天様に呼び止められたのかと思った。そんな錯覚を与えるほど、凛とした、よく通る声だった。
声をかけられたらまず立ち止まり、そうして「はい」と返事しながら、身体全体で振り返る。不意のことでも、あわてた様子を見せてはいけない。まして顔だけで「振り向く」なんて行為、淑女としては失格。
あくまで優雅に、そして美しく。少しでも、廃人のお姉さま方に近づけるように。
だから振り返って相手をタゲったら、まずは何をおいても笑顔でごきげんよう。
しかし残念ながら、祐巳の口から「ごきげんよう」は発せられることはなかった。
その声の主をチャットログで認識したとたんに絶句してしまったから。
「あの……。私にご用でしょうか」
「呼び止めたのは私で、その相手はあなた。間違いなくってよ」
間違いない、と言われても。いえお間違いのようですよ、と答えて逃げ出してしまいたい心境だった。声をかけられる理由に心当たりがない以上、頭の中はパニック寸前だった。
そんなことなど知る由もないその人は、うっすらと微笑みを浮かべ、真っ直ぐ祐巳に向かって近づいてきた。
「持って」
彼女は、手にしていた重藤弓を祐巳に差し出す。訳も分からず受け取ると、からになった両手を祐巳の首の後ろに回した。
(きゃー!!)
何が起こったのか一瞬わからず、祐巳は目を閉じて固く首をすくめた。
「付与枠が余っていてよ」
「えっ?」
目を開けると、そこには依然として美しいお顔があった。なんと彼女は、祐巳の大乗衣に付与石をつけていたのだ。
「装備品は、いつもきちんとね。毘沙門天様が見ていらっしゃるわよ」
そう言って、その人は祐巳から弓を取り戻すと、「ごきげんよう」を残して先に春日山城に向かって歩いていった。
(あれは……あのお姿は……)
後に残された祐巳は、状況がわかってくるに従って徐々に頭に血が上っていった。
間違いない。
目付小笠原長時隊、小笠原祥子さま。ちなみにIDはOGAS111710。通称『紅薔薇のつぼみ』。
(そんな……
恥ずかしさに沸騰寸前である。
(こんなのって、ないよ)
祐巳はしばらく呆然とたちつくしていた。
あこがれのお姉様と、初めて言葉をかわしたというのに。こんな恥ずかしいエピソードなんて、ひどすぎる。
毘沙門天様の意地悪。
悔し紛れに見上げた毘沙門天像は、いつもと変わらず清らかな微笑みを浮かべて、小さな緑のお庭の中にひっそりと立っていらっしゃるのであった。

今野緒雪著 マリア様がみてる より
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by kanon-gunyu | 2005-06-18 09:31 | 毘沙門天様がみてる